縦約68ミリ✕横約62ミリ。重さ約110g。全面に薄く黒漆が施された波濤紋の古金工鐔です。鐔の表側の左から下にかけて一太刀の刀傷があることが、覆輪の2か所の傷を結ぶとわかります(写真④⑤⑥)。幸い傷は覆輪で受け止められ、鐔の表面は傷ついていません。奇妙なのは刀痕があるのは鐔の表、柄が差し込まれている側で、刀身が伸びている側ではないことです。剣道の試合などの正攻法では、刀身のある側に斬りこみ痕が付きそうですが、室町堂が過去見た幾つかの戦国鐔の撃剣痕も、柄のある表側でした。しかもこれと同じように下方斜めに付いてました。この事実はこれらの撃剣痕が、奇襲や不意打ちによることを想像させます。まだ相手が刀を腰に差しているときに体に斬りつけた余波か、攻撃を封じるために小手を狙ったのかはわかりません。骨董品には往々にして解き明かせない謎が付随します。この刀痕が正攻法によって付いたものではないのは明らかです。相手が攻撃に入る前になされた電光石火の一撃です。勝つために手段を選ばない、先手必勝のしたたかな戦国のならいなのでしょう。
商品の情報
カテゴリー | その他 > アンティーク/コレクション > 工芸品 |
商品の状態 | やや傷や汚れあり |